『住まいの耐久性』を考える

家づくり

「どうすれば家は長持ちするの?」

「家の耐久性をもっと高められないか?」

この記事は、そんな疑問をもつ方に向けて書いています。

木造住宅の寿命は、イギリスで約80年、アメリカで約60年、日本で約30年といわれています。

各国によって大きく異なりますが、断トツで家の寿命が短い日本。。

では、日本の家を長持ちさせるにはどうしたらいいのでしょうか?

『住まいの耐久性 大百科事典II』をもとに、耐久性を高める方法の一例をご紹介します。

『住まいの耐久性』を考える

『住まいの耐久性』を考える
一般社団法人 住まいの屋根換気壁通気研究会(2021)『住まいの耐久性 大百科事典II』、カナリアコミュニケーションズ

本記事は、住まいの屋根換気壁通気研究会が編集する『住まいの耐久性 大百科事典II』を参考にしています。

まず、住宅の耐久性上、最も重要な躯体(基礎、柱、梁などで構成される建物を支える構造上の骨組み)の劣化には、「外皮」が深く関わっているということです。

外皮(がいひ)とは?

外皮とは、居住空間を包み込む外周部の構造の総称のことです。

外皮を具体的にいうと、①屋根、②外壁、③基礎を含む床下を指します。

人間でいえば、体を支える「骨」が躯体になり、躯体を包み込む「皮膚」が外皮といえるでしょう。

まがいもの感満載の窯業系のサイディング!?

外皮の一つである外壁についてですが、日本では、7割〜8割程度が窯業系サイディング(p.47)を採用しています。

窯業系サイディングは、セメントと繊維質を混合してつくられる外壁材です。

躯体の劣化に大きく影響する外壁のほとんどに、窯業系サイディングが使われているということです。

低コストでデザイン性の高いところが、窯業系サイディングの人気の理由です。

安く、好きなデザインを選べるのは魅力的ですね。

ところが、一級建築士であり、法政大学デザイン工学部兼任講師の飯塚豊氏の言葉を借りれば、「外壁材を選ぶとき、まがいもの感満載の窯業系のサイディングだけはなんとかさけたい」ところ。

なんとかさけたい窯業系サイディングを、日本のほとんどの住宅はさけられていないといえます。

そもそもほとんどの建築主(施主)は、窯業系サイディングをまがいものだとは思っていませんよね。。

たとえ窯業系サイディングがまがいものだったとしても、躯体が長持ちするのであれば問題はないですが、実際はどうでしょうか。

サイディングは工期が短縮できるので(その分安価に施工もできる)採用されやすくなるのは当然でしょうが、その結果、早くに躯体が劣化して、住まいの耐久性が落ちるようでは本末転倒だと思います。

本事典によると、耐久性上の問題点として窯業系サイディングの場合、吸水や吸湿による凍害(p.49)が挙げられています。

サイディング内部まで水分が侵入しなくても、表面上の凍害によって表層がはがれてしまうことがあるようです。

住まいの耐久性に影響が出るというデメリットを理解した上で、納得して窯業系サイディングを選ぶことが大事ですね。

住宅における熱損失

『住まいの耐久性』を考える

次に、住宅における熱損失と耐久性のかかわりです。

「熱損失(ねつそんしつ)」とは?

「熱損失」とは、住宅の屋根、天井、外壁、床、窓などを通して逃げる熱や、換気やすき間風によって持ち去られる熱のことです。(EPS建材関連用語集

本事典によると、逃げる熱が最も大きいのが『窓』なので、「諸外国は窓の断熱性に対して厳しい最低基準」を設けているとのこと。

いろいろな国で、熱が逃げやすい窓は使わないようにしている!という意味ですね。

そして、複層ガラス以上が常識の今は、窓の「枠材(框を含む)」の断熱性が重要であるといいます。

断熱性が高い枠材とは?

枠材の断熱性能が高い順に書くと…

  1. 木製
  2. 樹脂
  3. アルミ樹脂複合
  4. アルミ

木製の枠材が、最も断熱性能が高くなります。

ですから、大半の諸外国では「樹脂サッシ」が最も多いサッシになっているそうです。

2番目に断熱性能が高い枠材ですね。

さすがに、高価でハイスペックな木製がトップシェアにはならないようです。

ところが、、、

日本では、「アルミ樹脂複合」が最も多く、60%の普及率になります。(2019年、YKK AP調べ)

世界と比べると断熱性能が劣る日本

日本は世界基準に劣り、断熱性能が3番手のサッシを最も採用していることになります。

「樹脂」の普及率は、わずか20%程度です…。

ちなみに、おとなり韓国における樹脂窓の普及率は、80%です。

これらのデータを総合すると…日本では熱損失や断熱に対する意識が低いといわざるを得ません。。

だからこそ、諸外国と比べて、日本の木造住宅の寿命が約30年という短さになるのではないでしょうか。

アルミ樹脂複合でも十分よさそうですが、本事典によれば「結露によるカビ被害や木材の劣化」が問題になると記されています。

つまり、熱損失について何も考えずに日本で家を建てると、大半は断熱性能が低い「アルミ樹脂複合」を採用することになり、その結果、結露によるカビ被害や木材の劣化に悩まされることになりかねません。

樹脂サッシが日本で手に入りにくいとか、高価で採用できないということではないと思います。

日本の住宅業界はビジネス・コスト至上主義といわれます。

日本の住宅が短命になるのは、利益ばかり追求しすぎた結果ではないでしょうか。

【めとめ】諸外国と比べながら日本の住宅事情を知ろう

マイホームをもつ場合(リフォームする場合)、諸外国と比べながら日本の住宅事情を調べようとする姿勢が欠かせません。

そして、外壁材は慎重に選択し、少々割高になったとしても窓は「樹脂サッシ」か「木製サッシ」を選ぶ。

以上、住まいの耐久性を高める際のご参考になれば幸いです。

【マイホームをつくる建築会社を選ぶ極意】を30,000文字で書きました! ⇓

【実録】地元の工務店で建てよう|42tkbts|note